捨てられていた食材をエサとして活用 京都市動物園

開園120周年を迎えた京都市動物園は、東京の上野動物園に次いで日本で2番目に古い歴史を持つ動物園です。明治36年の開園当初はウマやシカ、伝承鳩などが展示されていました。今では123種570体の動物が暮らしています。

そんな歴史のある京都市動物園では、企業や団体から捨てられていた食材をエサとして寄贈してもらう取り組みをはじめました。エサ代が節約できるのはもちろんのこと、動物たちの食卓が豊かになったり、食材の廃棄コストを削減できたり、社会問題になっているフードロスを減らしたりなど様々ないい影響が生まれています。

財政難の京都市で節約の工夫

近年、京都市は深刻な財政難に陥っており、財政改革を進めています。影響は市が運営する動物園にも及んでおり、各種施設の再整備計画は凍結、入園料の値上げなどが行われました。

園側も運営費削減のために様々な工夫を行っています。そのひとつとして始めたのが、企業や団体で余った食材を寄贈してもらい、動物たちのエサにする取り組みです。

本格的に寄付を受け付け始めた2021年には、それまで年間6,000万円かかっていたエサ代を5,100万円に削減することができました。1年間で寄贈されたエサは32トン、1,200万円分になります。

2022年には、規格外品となった野菜や果物、造園会社が伐採した枝葉など、46の会社・団体が寄付を行っています。エサの輸送コストも寄贈者に負担してもらうという全国的にも珍しいスタイルです。寄付で賄っているエサは全消費量の2割に上ります。

動物たちの食卓が豊かに

エサの寄付による効果は節約だけではありませんでした。動物たちの食生活の向上という嬉しい成果も生まれています。

例えば、コナラの仲間のシラカシはゾウの大好物です。しかし、動物園のエサとしては高価なため、今まではあまりたくさんの量を与えることはできませんでした。一方で、シラカシは街路樹や庭木などとして一般的なため、剪定をする造園会社では大量の枝を廃棄していました。

今では造園会社からこれまで廃棄していたシラカシを寄付してもらうことで、十分な量のシラカシをゾウに与えることができています。

ゴリラが楽しみにしているのは、ブランド京野菜としても有名な金時ニンジンです。料亭にも納入されている一品ですが、これまでは調理用に梅形に型抜きした残りの部分を廃棄していました。

ナマケモノが食べているのは好物のきゅうりです。こちらは規格外品として捨てられていた品です。

寄付により多様で新鮮な食材を入手できるようになり、動物たちの食生活が一層豊かになりました。

企業にとっては廃棄コスト・フードロス削減のメリット

動物園にエサを寄付する企業側にとってもメリットがあります。

まず、経済的なメリットとして大きいのが、廃棄コストを削減できることです。

京都の老舗漬物店の「大安」では、野菜の漬物を作る際に出る野菜の端材を年間で約200トン廃棄しています。当然、廃棄するのにはコストがかかります。

現在は、その一部を週2回、動物園に寄付することで廃棄コストを削減できています。

そして、本来は捨てる食材を寄付することでフードロスの削減に繋がります。持続可能な社会を目指す上で食材を無駄にしないこと、有効活用することはとても大切なことです。

また、各企業で働く人にとっても、まだ使える食材を捨ててしまうことはどこか後ろめたい気持ちにさせられるものがあります。今まで捨てていた食材を動物たちが美味しそうに食べる様子は見ているだけで嬉しくなるものです。

寄付されたエサや物品を使う様子をSNSやブログで発信

京都市動物園では寄付されたエサや物品を使う様子をインスタグラムやブログで積極的に発信しています。

こちらは造園業者から寄付されたシラカシを食べるゴリラのゲンタロウの様子です。

積極的に情報を発信することで、寄付をした人が効果を実感しやすく、動物園をより身近に感じることができるようになります。

エサ代サポーター制度、Amazonほしい物リストなどの取り組みも

京都市動物園では、個人でも1,000円からエサ代を寄付することができる「エサ代サポーター」を募集しています。さらに、Amazonの「ほしいものリスト」を活用して物品の寄贈を受け付けるなど様々な取り組みを行っています。

物品の使い道についても、ホームページやInstagramで写真つきで報告をしているので、寄付をした人は自分が送ったものがどのように使われているのか知ることができ、動物園をより身近に感じられるようになります。

参考