覚えるよりも思い出す方が記憶に残る【記憶術】

覚えるよりも思い出す方が記憶に残る【記憶術】
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単語などを暗記するには、インプットとアウトプットどちらが効果的なのでしょうか?『受験脳の作り方(池谷裕二著)』では、脳は「出力依存型」のため、アウトプットを手を抜かずにやったほうが効率がいいと紹介されています。

暗記実験

インプット、アウトプットと記憶の関係を検証するために次のような実験が行われました。

4つのグループに分かれてスワヒリ語の単語を40個覚えてもらいます。

まずは40個の単語を一通り覚えて、テストをします。

当然、知らない単語、それもスワヒリ語の単語をいきなり40個覚えられる人はいません。

そこで満点が取れるまで見直しと再テストを繰り返します。

このとき、グループごとに見直しと再テストのやり方を変えます。

グループ1は全部の単語を見直して、全部の単語を再テストをします。

グループ2は間違えた単語だけを見直して、全部の単語を再テストをします。

グループ3は全部の単語を見直して、間違えた単語だけを再テストします。

グループ4は間違えた単語だけを見直して、間違えた問題だけを再テストします。

各グループの見直しと再テストのやり方をまとめると次のようになります。

グループ 見直し 再テスト
グループ1 すべての単語 すべての単語
グループ2 間違えた単語 すべての単語
グループ3 すべての単語 間違えた単語
グループ4 間違えた単語 間違えた単語

暗記実験の結果

4つのグループに分かれて間違えがなくなるまで再テストを繰り返したところ、間違えがなくなるまでの再テストの回数にグループ間の差はありませんでした。

つまり、どのグループでも覚えるまでの回数はおなじだったのです。

ところが、1週間後に同じテストを行ったところ、各グループの点数は大きく開きました。

グループ1とグループ2は約80点だったのに対し、グループ3とグループ4は約35点しか取れなかったのです。

1週間後の再テストの結果をまとめると次のようになります。

グループ 見直し 再テスト 1週間後のテスト
グループ1 すべての単語 すべての単語 約80点
グループ2 間違えた単語 すべての単語 約80点
グループ3 すべての単語 間違えた単語 約35点
グループ4 間違えた単語 間違えた単語 約35点

グループ1とグループ2は1週間経っても8割の単語を覚えていたのに対し、グループ3とグループ4は1週間後にはほとんどの単語を忘れてしまい3~4割程度しか覚えていなかったことになります。

脳はアウトプットを重視する

実験の結果から分かることは、脳はアウトプットを重視するということです。

見直し(インプット)のやり方は1週間後のテストの結果に影響を与えませんでした。再テストのやり方が同じならば、すべての単語を見直しても、間違えた単語だけを見直しても、成績は変わりませんでした。

1週間後のテストに影響を与えたのは、再テスト(アウトプット)のやり方です。間違えた単語だけを再テストするよりも、すべての単語を再テストした方が1週間後の成績が良かったのです。

もちろん、インプットのないアウトプットはあり得ないので、勉強においてインプットは欠かすことができません。しかし、記憶への定着という点では、インプットよりもアウトプットが重要になります。

脳は「よく使う情報」を覚えようとする

なぜアウトプットした情報のほうが記憶に定着しやすいのでしょうか?

脳で記憶をつかさどるのは海馬という部分です。

脳には毎日ありとあらゆる情報が入ってきます。その無数の情報の中から、どの情報を脳に保存するのかを海馬が判断します。

今回の実験から分かることは、海馬が記憶するかどうかを判断する際には、「よく使う情報かどうか」をひとつの基準にしているということです。

海馬は頻繁に使う情報があると「この情報はよく使うから覚えておこう」と判断するわけです。

アウトプット重視の効率的な勉強法

海馬の「よく使う情報」を覚えておこうとする特性を活かすためには、インプットをしたら必ず何らかの形でアウトプットをするのが効果的です。

教科書や参考書をざっと読んだら(インプット)、問題集などの問題を解く(アウトプット)に力を入れることが、効果的な学習になります。

大切なことは、1回で完璧に覚えようとするのではなく、何度もアウトプットを繰り返すということです。人間脳は1回で完璧に覚えられるようにはできていません。失敗を繰り返しながら何度も同じ情報を使うことで、海馬が「この情報はよく使うから覚えておこう」と判断し、記憶に定着するのです。

「復習」が大事というのはよく言われますが、復習はアウトプットを中心に、それも何度も繰り返し行うことで記憶に定着していきます。

出典