前に、さなえちゃん言っていたよね、自分の代わりなんていくらでも居るって。
「うん」
それ、そのとおりだと思う。
だって、私の国王の仕事も本当はツバキヨシノって女優さんがやるはずだったんだよ。
「国王にだって代わりはいるってこと?」
そう、だから世の中に代わりの効かない仕事なんて無い。
「でも、それじゃつまんないよ。」
そんなことない。国王の仕事だって私がやるのと、ツバキヨシノがやったのとじゃ全然違ったと思う。
どんな仕事だって、代わりはいても、結果はその人にしか出せないことがある。
だから、さなえちゃんの東京での仕事もそうだったんだよ、きっと。
誰がやっても同じように見えて、実はよくよく見ればどこかにさなえちゃんらしさがちょっとだけでも隠れてて。
「私らしさが。でも、私、誰からも褒められたことなんて無かった。」
大丈夫。
それに、気づく人もいるし、気づかない人もいる。
良いって思ってくれる人がいれば、逆にそれじゃ駄目だって人もいたり。
いろんな人のその人らしさが影響しあって、また別の何かが生まれていくっていうか。
なんか上手く言えないけど、でもきっと、世界ってそういうのの集まりでできているんじゃないかって思う。
木春由乃『サクラクエスト』 第5話