「ソロスの講義録 資本主義の呪縛を超えて」を読みました。
現在主流の経済理論には大きな欠点がある、とソロスは指摘しています。
その欠点とは、すべての人が合理的で、正しい行動をするという、現実にはあり得ないことを理論の前提としてしまっている点です。
科学や生物学などでは、人は事実を客観的に分析し、理論を体系化することが可能です。
しかし、経済学などの社会科学では、人は現実を「完璧に正しく」認識することは決してできません。
それは、人が分析者であると同時に、参加者でもあるからです。
そのため、人が何かを分析し、分析により体系化した理論によって将来を予測したとしても、人は同時に参加者であるため、「分析した」というその事実により、将来が、当初の分析結果と変わってしまうのです。
また、人は、往々にして現実に対して「誤った」認識を持っています。その誤った認識でさえも現実に影響を与えます。
例えば、現実には景気が良くないのに、人々が「景気は良い」と認識したとします。景気が良いと考える人々が増えると、経済は活性化し、実際に景気がよくなります。
人の現実に対する誤った認識が、結果を変えたのです。
そして、この認識と結果が行き過ぎたポイントがバブルです。
バブルは途中でだれも気が付かないうちに弾けることもあれば、行き着くところまで行って、現実に大きな傷跡を残すこともあります。
景気が良いと認識し、金融市場が活性化し、経済が活性化し、実際に景気が良くなる。景気が良いので、今後も景気がよくなると考えて、企業は投資を増やしたり、人々はローンを組んで新たな消費が増える。消費が増えたので景気が良いと人々は考え、さらに金融市場が活性化する。金融市場が活性化したので、人々はさらに投資や消費を増やす。
誤った認識により、バブルがどんどん大きくなります。
ここで大切なポイントは、実際に景気が良くなっているということです。問題は、それが行き過ぎていることです。
あるとき、誰かが気が付きます。あれ?実際に景気はこんなには良くないんじゃないか、と。
すると、バブルが弾けるのです。