麗しのバフェット銘柄

麗しのバフェット銘柄

麗しのバフェット銘柄」を読みました。

著者はバフェットの息子ピーター・バフェットの元夫人、メアリー・バフェットです。

12年間ファミリーの一員としてバフェット

バフェットは10万5000ドルの資金を300億ドルに増やすというとてつもないことをやってのけた、伝説的な投資家です。

本書ではバフェットの「選別的な逆張り投資法」を深く掘り下げて、具体的に分析、解説しています。

バフェットの投資法

バフェットの投資法のポイントは、次の文章によく表れています。

バフェット好みの企業を単に知るだけでは不十分である。大切なことはそうした企業の株式をできるだけ安く買うことである。どんなに素晴らしい企業の株式でも高値で買ったのでは、大きな利益を手にすることはできない。株式投資で資産を築くには、素晴らしい企業の株式をできるだけ安い値段でかうことである。

バフェットの投資原則は次のルールに要約されます。

バフェットは自らの投資原則に基づいて、安値まで売り込まれた持続的な競争力を有する企業の株式だけを買い集める。

バフェットの投資法は、投資家のほとんどが目先の利益を追求しているために起こる、マーケットの長期的な歪みを利用したものです。

バフェットのすごいところは、株式市場は短期的には効率的であるが、長期的にはまったく非効率的であることを見抜いていたことである。したがって、彼は株式市場の長期の非効率さを利用する投資戦略を作り上げた。

バフェットが株を買うタイミング

バフェットは優良な企業を探して、その株価が十分に値下がりしたタイミングで購入しました。どんなに優良な企業でも、株価が高ければ投資はしませんでした。バブルが弾けたタイミングなど、株価が大きく値下がりしたタイミングを狙って、優良企業の株に投資するのです。

バフェットは自らの投資原則に基づいて、安値まで売り込まれた持続的な競争力を有する企業の株式だけを買い集める。

バフェットの投資法は単に底値を拾うという伝統的な逆張り手法ではない。彼のやり方は株式市場の近視眼的な悲観主義をうまく利用して、最も優れた企業の株式をバーゲン価格で買うというものである。

バフェットが株を売るタイミング

重要なのは、投資をしてもすぐに値上がりをする訳ではないという点です。

優良企業の株式でもバフェットが買った直後からぐんぐんと値上がりするわけではない。

基本スタンスは長期保有です。

これらの株式が大きな利益をもたらしてくれたのは、その有望なビジネス価値を信じて長期にわたって辛抱強く保有したからである。

価格競争型の企業には投資しない

価格競争型の企業には投資しません。

同じような商品を販売していれば、その商売の成否を決めるのは価格だけである。こうしたタイプの企業が価格競争型の企業と呼ばれるもので、バフェットはけっして手を出さなかった。

価格競争型の企業を見分けるのは難しくありません。

価格競争型の企業を見分けるのはそれほど難しいことではない。そうした企業の商品やサービスは値段が唯一の売り物であるからだ。

価格競争型の企業の代表例

  • インターネットのポータル運営
  • インターネットのプロバイダー
  • メモリーチップ・メーカー
  • 航空会社
  • (トウモロコシや米などの)穀物生産
  • 鉄鋼製品
  • 石油・天然ガス
  • 林業・製材
  • 紙・パルプ
  • 自動車

空運業会でもロサンゼルスからサンフランシスコに行くには値段さえ安ければどの航空会社でもかまわないし、ゼネラル・モーターズ(GM)とフォードの自動車を比べて安いほうを購入するだろう。こうした競争の激しい産業では売上高利益率も低く、これらの企業に投資しても大きなリターンはあまり期待できない。「こうした価格競争型の企業では値段の安さが勝負を決定する。価格競争を主導するのは最安値を提示する企業である。」この分野の企業が他社よりも高い利益率を確保するにはコスト削減という手段しかなく、そのためには内部留保利益を食いつぶして設備投資をしたり、ほかの企業を買収しなければならない。

価格競争型の企業は、好景気の時期には業績が改善します。

価格競争型の企業でも需要が供給を上回る好景気の時期には少しはいい思いをすることができる。

しかし、ブームが終わると価格競争型の企業の業績は悪化します。

ブームが終わると(すべてのブームはいずれ終了する)、残るのは過剰な生産設備、高額の配当支払い、重い労働コストなどである。

そして、株価は暴落します。

GMなどは1990~1993年に96億ドルもの累積赤字を計上した。それまで積み増してきた2000億ドルの内部留保はすぐに底を突き、まもなく工場閉鎖と減配、そして株価の暴落を余儀なくされる。

最新のメモリー・チップの開発に成功すれば一時的に利益が増えますたが、数年後には製品価格は暴落します。残るのは、過剰な生産設備だけです。

航空会社は旅行客が増える夏、あるいは訪日ブームで利益が増えますが、繁忙期やブームが終われば、需要が減ります。

こうした企業では、経営陣が先の見通しを誤ると、すぐに窮地に追い込まれます。

持続的な競争力を持つ企業にのみ投資をする

バフェットは、ドットコム・バブルのときでも、それらの株には手を出しませんでした。バフェットが重視するのは、

バフェットはその企業がどのように社会を変革または発展させるのかではなく、その企業の「競争力」とその競争力の「持続性」こそが株式投資の基本であると強調していた。

「持続的」の一つの基準は、「競争力」を維持するコストが安いことです。

バフェットによれば、ブランド商品や地域的な独占力といった競争力だけでは不十分であり、その競争力には持続性が伴わなければならない。すなわち、「そうした競争力を維持するために多額の設備投資を必要としない」で、将来的にもその競争力を維持できることである。

優秀な人材や設備投資が必要な企業は、「持続力」があるとは言えません。

優秀な人材や大規模設備によって競争力を維持している企業もあるが、その商品のライフサイクルは短く、バフェットの基準に照らせばそうした企業の商品に持続性はない。

インテルは競争が激しい分野の好例です。

インテルの競争力は新しい革新的な製品を作り出すという経営陣の能力にすべてかかっている。経営陣が判断を誤れば、同社とその株主たちはたちどころにこけてしまう。

新製品を開発しなくてもしばらくやっていけるか、がひとつの判断基準になります。

もしもインテルが新しい製品を投入することができなくなれば、同社は直ちに競争の戦場から脱落するだろう。これに対し、バフェットが投資するのは消費者の心に深くインプットされているリピート商品を生産する企業である。これを逆に言えば、素晴らしいリピート商品を持っているがゆえに、あまり優秀ではない経営者でも十分になっていけるような会社である。

社会を変革するような企業には投資しない

バフェットは、多くの投資家が注目する、社会に変革をもたらすような企業には興味を示しません。

株式投資の基本とは社会を変革または発展させるような企業をターゲットにするのではなく、持続的な競争力を持つ企業にすべてのエネルギーを注ぐことである。

バフェットの株式投資の10のチェック項目

基準1 ROE(株主資本利益率)は高く安定しているか

バフェットは、平均ROEが12%を上回る企業だけを投資対象としていました。この数値は高いほどいいです。ROEが高い企業は、収益力があると言えます。また、ROEは「一貫して」高いことが必要です。バフェットはROEにばらつきのある企業には投資しませんでした。

基準2 ROA(総資本利益率)は高く安定しているか

高ROE企業の中には、高配当や自社株買いなどによって、株主資本を低く抑えて、ROEを高めている企業があります。また、借り入れが多い企業もROEが高くなりがちです。バフェットは、ROAが12%以上の企業のみを投資対象としていました。ただし、金融機関については、借り入れが多くなりがちなので、ROAが1%以上という基準を用いていました。

基準3 利益のトレンドは上向きか

EPSのトレンドが上向きになっていることが大切です。EPSにばらつきが見られる企業は価格競争型企業の典型です。また、EPSの一時的な落ち込みは買いのチェンスです。「その企業が克服可能な一過性の問題に直面し、株式市場がそれに過剰反応したときこそ絶好の買いのチャンスである。」

基準4 多くの長期債務を抱えていないか

価格競争型の企業は激しい競争に打ち勝つために、常に設備投資が必要になります。そのたま、多額の長期債務を抱えがちです。一般的に、持続的な競争力を持つ企業は、長期債務を5年以内に返済できる利益を上げています。

基準5 持続的な競争力を持つ製品やサービスを持っているか

持続的な競争力を持つ企業は、大した設備投資や新商品、新サービス開発をしなくても、今ある商品、サービスだけで5年、10年と利益を上げ続けることが可能です。また、1回きり製品よりも、消費者が常に必要としているリピート商品がいいです。リピート商品には、次のようなものがあります。

ハンバーガー(マクドナルド、ウィンディーズ、バーガーキング)、ピザ(ピザハット)、フライドチキン(KFC)、タコス(タコベル)、雑誌(タイムズ・ミラー)、コーヒー・タバコ(フィリップ・モリス)、キャンディー(ハーシー・フーズ)、チューインガム(ウィリアム・リグレー)、清涼飲料(コカ・コーラ、ペプシコ)、パンティーストッキング(レッグズ)、タンポン(プレーティックス)、練り歯磨き(プロクター・アンド・ギャンブル)、家庭用品(コルゲート・パルモリブ)、薬(メルク)、ジーンズ(リーバイ・ストラウス)、スポーツシューズ(ナイキ)、下着(サラ・リー)、アパレル(リズ・クレイボーン)、自動車保険(GEICO、オールステート)

基準6 労働組合はないか

労働組合は、投資家の利益を減らして、労働者の利益を増やすためのものです。バフェットは労働組合のある企業には投資しません。航空会社では、パイロットがストライキを起こすと航空機は運休を余儀なくされるので、パイロットの賃上げ要求を飲むしかありません。自動車業界でも、利益が出てくると、労働組合が賃上げを要求します。好景気のときは、賃上げをしても十分な利益が出ます。しかし、不景気になったときに残るのは、多額の賃金負担だけです。

基準7 インフレの影響を製品やサービスの価格に転嫁できるか

持続的な競争力を持つ企業は、インフレでも、製品価格を上げることができます。一方、価格競争型の企業は、インフレで価格を上げることが難しい、場合によっては、インフレでも価格は下がっていきます。例えば、航空会社は思い固定費を抱えています。機体、燃料、パイロット、地上員、整備工、スチュワーデスなどの費用は重く、インフレがこれに追い打ちをかけます。一社が値下げをすれば、他社も追従します。1960年代には、オマハからパリまで1000ドル以上もしましたが、今では、439ドルでいけます。

基準8 内部留保利益を蓄積しているか

持続的な競争力を持つ企業は、巨額の投資が不要なので、内部留保を蓄積することができます。

基準9 自社株買いを実施しているか

内部留保を蓄積できる企業は、その利益の一部を自社株買いに向けることができます。

基準10 内部留保利益が企業価値を向上させているか

内部留保利益を適切に再投資すれば、その分企業の利益は向上し、株価も上昇します。

バフェットの情報源

新聞、専門誌

  • ウォール・ストリート・ジャーナル
  • ニューヨーク・タイムズ
  • ワシントン・ポスト
  • ロサンゼルス・タイムズ
  • シカゴ・トリビューン
  • フォーチュン
  • フォーブス
  • ビジネス・ウィーク
  • アメリカン・バンカー
  • 企業の年次報告書

インターネット

  • ブルームバーグのプロフェッショナルサービス(http://www.bloomberg.com/)
    債券価格を含むすべての市況をカバー
  • バリューライン・インベストメント・サーベイ(http://www.valueline.com/)
    3500社の15年間にわたる主要な財務統計を網羅
  • ムーディーズ・ストック・ガイド(https://www.moodys.com/)
  • スタンダード・アンド・プアーズの株式レポート(https://www.standardandpoors.com/)
    6000銘柄の株式情報をカバー
  • PRニュースワイヤ(http://www.prnewswire.com/)
    2000社以上の年次報告書や過去30年間のリアルタイム情報を電子配信
  • SEC(証券取引委員会)のEDGAR(有価証券報告書データベース)(https://www.sec.gov/edgar.html)
    上場企業の年次・四半期報告書を網羅
  • オンライン投資情報サービス(http://www.msn.com/)
    数千社の10年間にわたるヒストリカルデータ