週末に祖父の葬儀がありました。
祖父は山形県に住んでおり、宗派は曹洞宗(そうとうしゅう)です。
これまで、都内や関東圏の葬儀には参加したことがあるのですが、曹洞宗の葬儀ははじめてでした。
正直、これまで知っていた葬儀のやり方と全然違いました。
近所の人や友人は亡くなった日か翌日の日中に弔問に訪れ、いわゆる通夜式は行いません。また、通夜式の代わりに親族だけで行う納棺の儀があります。火葬は告別式の前に行います。告別式のあとに五七日(ごしちにち)という法要を行います。食事は五七日に参加した人だけに振る舞います。参加者も、告別式の香典と五七日の香典は分けて持ってきます。告別式に参加した人には普通に香典返しを渡しますが、五七日に参加した人には、香典返しに加えて返礼品を渡します。
地域の人はこのやり方に慣れているのですが、東京から参加した人は流れが違って混乱します。遺族がこのやり方になれていない場合はさらに大変です。我が家は祖父は山形に住んでいたのですが、私を含めた遺族は東京に住んでおり、曹洞宗の葬儀のやり方を知らず、葬儀社の人に色々と教えてもらいながら、なんとか終えることができました。
地域によってもルールは色々と異なると思いますが、これから曹洞宗の葬儀を行ったり、参加したりする際の参考になれば、と思い、曹洞宗の葬儀の日程ややり方を解説します。
曹洞宗の葬儀の日程
祖父は深夜に亡くなりました。1日目は葬儀の準備を行いながら近所の方の弔問を受けました。2日目も日中は弔問を受け、夕方から親戚のみで納棺を行いました。3日目は出棺、火葬、告別式、五七日の法要、五七日の食事を行いました。
曹洞宗の葬儀の流れ
<1日目>
1. 臨終
2. 遺体の搬送
3. 枕飾り
4. 葬儀打ち合わせ1
5. 枕経(僧侶: お車代)
6. 葬儀打ち合わせ2
7. 新聞に訃報を出す
8. 近所の人や友人、会社の人の弔問
<2日目>
9. 納棺(夕方から、親戚のみ参加、僧侶: お車代)
10. 食事
11. 通夜(通夜式はなし、家族が故人に付き添って宿泊するだけ)
<3日目>
12. 出棺
13. 火葬
14. 告別式(僧侶: 御布施料)
15. 五七日の法要
16. 五七日の食事
1. 臨終(1日目)
最初の方の流れは、他の宗派と同じです。医師によって臨終が告げられ、病院から死亡診断書を受け取ります。死亡診断書は役所で火葬許可証を発行したり、その後、役所や銀行、保険の手続きの際に必要になるものなので、大切に保管します。
葬儀社にも速やかに連絡します。葬儀社が決まっていない場合は、病院でも紹介してもらえますが、可能ならば事前に決めておきましょう。祖父は葬儀社の互助会の会員になっていたので、連絡をしたらすぐに駆けつけてくれました。
菩提寺がある場合は、僧侶にも連絡しておきます。
2. 遺体の搬送
葬儀社の人が来たら、遺体を搬送します。車は葬儀社が手配してくれます。昔は自宅に搬送することが多かったと思いますが、今は、直接、葬儀社の斎場に向かうことが可能です。もちろん、自宅へ連れて行くことも可能です。
我が家は斎場が自宅から近かったので、直接斎場に連れて行ってもらいました。
3. 枕飾り
葬儀社の人が遺体を安置して、枕飾りを整えてくれます。斎場でも、自宅でも同じです。
遺体の胸に魔除けの刃物を起きますが、必要なものは葬儀社の人がすべて揃えてくれるので、気にする必要はありません。
4. 葬儀打ち合わせ1
枕飾りが終わって落ち着いたら、まずは葬儀社の人と今後の日程を打ち合わせます。特に、火葬場は葬儀社とは運営が別なので、早めに日程を確認して抑えます。火葬場は、市区町村や、市区町村から委託された民間業者が運営していることが多いです。斎場の空き状況や、火葬場の空き状況を考慮して、日程を決めます。火葬場の予約は葬儀社の人がすぐに手配してくれます。
5. 枕経
僧侶が到着したら、枕経(まくらぎょう)を読経してもらいます。
菩提寺が決まっていない場合は、葬儀社が同じ宗派の寺院を紹介してくれます。
枕経が終わったら、僧侶に納棺や火葬、告別式など参加が必要な日程を伝えます。
お車代
僧侶にはお車代を渡します。お車代は5,000円くらいでいいでしょう。地域によっても相場は違うと思うので、分からない場合は、事前に葬儀社の人に相談しておきましょう。
お車代は、葬儀社の人に、お車代を渡す封筒ありますか?と聞けば、すぐに用意してくれます。無くても、白い封筒を用意して、上に「御車料」と書いて、下に「○○家」、もしくは「喪主の氏名」を書けば大丈夫です。
裏には金額を書きます。表にフルネームを書かなかった場合は氏名も書きます。寺院とはじめてお付き合いする場合や住所が変わっている場合は、住所、電話番号も書いておきます。これらは、内袋に書いてもいいです。また、時間がない場合は、書かなくても大丈夫です。
渡すのは僧侶が帰るタイミンです。「お車代でございます。どうぞお納めください。」といって渡します。斎場に写真のようなお盆があれば、それに乗せて渡します。無ければ、手渡しで大丈夫です。
このときはまだバタバタしていると思うので、お車代の準備が間に合わなければ、お渡ししなくても大丈夫です。このとき、「お車代は後日で…」など不躾なことは言わなくて大丈夫です。お坊さんも、特に何も言わずに帰っていきます。後日、他のお車代や御布施を渡す際に、「先日分と今回のお車代です」ということで、まとめてお渡しします。
6. 葬儀打ち合わせ2
葬儀社の人と、次々と打ち合わせをしていきます。
基本的には、葬儀社の人に聞きながら決めていけば大丈夫です。
ここでは、東京、関東圏の葬儀とは異なり、何だこれ?とちょっと困ったものについて紹介しておきます。
盛籠
東京や関東圏の葬儀ではあまり見かけないのですが、今回の山形の葬儀では、「盛籠(もりかご)」というものがありました。
お葬式で、親戚や親友が花を供えると思いますが、花の代わりに「盛籠(もりかご)」を供える人がいます。特に、ご年配の方に多いようです。
そもそも、「盛籠(もりかご)」って何?という人が多いと思います。
この写真が、盛籠です。
真ん中の籠(カゴ)に、お茶や乾物、出汁や缶詰、日用品などの品物を置き、その周りを簡単に花などで飾ります。「乾物の盛り籠」、「缶詰の盛り籠」、「日用品の盛り籠」、「乾物と缶詰のセットの盛り籠」などがあります。要は、花のような一時的なものではなく、葬儀の後も遺族が使える物を送る、という考え方です。
花と同じように、1万円~2万円くらいの予算で葬儀社の方でいくつかセットを用意しているので、盛り籠を送る人はこの中から選べます。もちろん、個人個人で手配しても大丈夫です。
花を贈ることに慣れた私なんかは、最初、かなり違和感があったのですが、個人の好みなので、盛り籠を出したいという人には、そのようにしてもらいましょう。葬儀は地域のやり方に合わせるのが一番です。
もちろん、花を贈っても大丈夫です。私は花を出しました。今回の葬儀では、盛籠と花が半々くらいでした。
玄関に御霊前の提灯
御霊前の提灯はこちらの写真のようなもので、「御霊前」と書かれた提灯の下に花があり、玄関の前に置きます。
近所の人が見て、あそこの家、誰か亡くなったんだ、と伝える役割があります。
東京、関東圏では見たことが無かったのですが、田舎など、地域によっては、これが当然のようです。最初、そんなの要らないでしょ?と思ったのですが、近所では出すのが当たり前とのことだったので、出すことにしました。田舎は近所付き合いが大切なので、地域のやり方に合わせましょう。
エンバーミング
今回は、エンバーミングをお願いしました。
エンバーミングは、遺体を保存するための処理の一つです。遺体の保存が長くなる場合などに行うことがあります。動脈から防腐剤を注入して、静脈から体内の血液を排出します。さらに、腹部に1センチメートルくらいの穴を空け、消化器官内の残存物や、胸部や腹部の体液を吸引、除去し、代わりに防腐剤を注入します。
処理は、エンバーマーと呼ばれる専門のライセンスを取得した人が行います。
遺体を数日間保存する場合など、どうしても鼻やお尻から体液が漏れてきます。通常は、綿を詰めて漏れを防ぎますが、それでも、数日経つと臭いがしてきます。弔問に訪れた人が、顔を近づけた時に、エンバーミングをしておくと臭いの心配がありません。
また、体内に防腐剤を注入するので、闘病などで遺体の顔がやつれている場合でも、ある程度、ふっくらとさせ、綺麗に整えることができます。
エンバーミングの費用は数十万円と高価なので、予算や遺族の考え方で、やるかどうかを決めればいいと思います。
また、エンバーミングをしておくと、遺体を冷やすためのドライアイスは不要になります。
今回のエンバーミングの費用は、葬儀社の互助会に入っていたので、会員価格で16万円でした。ドライアイスの費用などがかからないので、その分は差し引いて考えると、実質、10万円くらいでした。
ちょっと調べてみましたが、エンバーミングの費用は、葬儀社によって、かなり違うようです。
あと、エンバーミングの際に、故人に好きな服を着せることができます。スーツや、故人が生前に好きだった服を着せてあげることができます。
7. 新聞に訃報を出す
今回、はじめて新聞に訃報を出しました。
ちなみに、我が家は名家でも、著名人でも何でもありません。普通の一般家庭です。
ですが、葬儀社や近所の人によると、この地域では、亡くなったら新聞の訃報欄に掲載するのが当たり前、とのことだったので、出すことにしました。
訃報は無料で掲載できます。
葬儀社が、全国紙や地域の新聞への掲載依頼を一括で、手配してくれます。
実際に訃報を出したところ、昔の会社の同僚や、友人などが、「新聞の訃報を見ました」と、弔問に訪れてくれました。東京では新聞の訃報欄なんか気にしたことも無かったのですが、地域によっては、こんな風に活用されているんだなぁ、とちょっと驚きでした。
8. 近所の人や友人、会社の人の弔問
その日の夜か、翌日の日中に近所や友人、会社の人が弔問に訪れます。服装は、弔問に訪れる人も、遺族も平服で大丈夫です。遺族は、可能ならば黒っぽい服がいいと思いますが、特にこだわらなくても大丈夫です。
この地域では、いわゆる、通夜式は行いません。
みんな、来たいときに、自由に駆けつけて、お線香を上げて、ちょっと話して、帰っていきます。
夜は、斎場に泊まることができます。寝ずの番をしてもいいのですが、最近は長時間用のお線香が用意されており、体力的にもきついので、線香だけ焚いておいて、あとは寝てしまっていいと思います。
斎場には、お風呂や布団が備え付けられていることが多いです。
9. 納棺(夕方から、親戚のみ参加、僧侶: お車代)(2日目)
2日目の日中も、弔問客が随時訪れます。
夕方からは、納棺の儀を行います。これは、親戚など、親しい人だけが参加します。
服装は、遺族は礼服が望ましいと思います。東京と同じように、いわゆる略礼服で大丈夫です。遺族以外は、平服で来る人も結構います。
基本的には、葬儀社が進行してくれるので、流れに従えば大丈夫です。
僧侶がお経を唱えて、ご遺体を棺に移します。
棺に、生花や、故人が好きだったものを入れます。
生花は葬儀社が手配してくれるので、棺に入れたい故人が好きだったものだけ用意しておきます。もちろん、貴金属は火葬できないのでダメです。
棺の釘打ちはまだしないので、入れたいものは翌日、出棺の前に入れても大丈夫です。
僧侶が帰るとき、枕経のときと同じように、お車代を渡します。今回も5000円くらいでいいと思います。
曹洞宗のお焼香の回数とやり方
曹洞宗のお焼香は、2回です。
1回目は香を右手でつまんで、手を返してつまんだ指を上にして、左手の手のひらを右手の甲に添え、額の近くに押しいただきます。
2回目は、香をつまんで、そのまま落とします。
遺族は、やり方が分からなければ、葬儀社の人に確認しておきましょう。遺族以外の参列者は、遺族のやり方を見ておけば大丈夫です。
10. 食事
夕方からの納棺が終わったら、参列者に食事を振る舞います。
11. 通夜(通夜式はなし、家族が故人に付き添って宿泊するだけ)
夕方からの納棺、食事が終わったら、その日は特に何もすることがありません。
この日が、いわゆる通夜にあたります。
この日も、斎場に泊まります。寝ずの番をしてもいいのですが、1日目と同じように、長時間用の線香だけ焚いておいて、あとは寝てしまってもいいと思います。
12. 出棺(3日目)
3日目は、出棺、火葬、告別式、五七日の法要があります。
告別式の前に火葬を行います。これまでは、告別式を行ってから火葬、という葬儀にしか参加したことんがなかったので、こんなやり方もあるんだ、とかなり驚きました。
まずは、出棺の儀です。出棺の儀は、特に受け付けはありません。
服装は、遺族は礼服です。東京と同じように、いわゆる略礼服で大丈夫です。告別式は、遺族以外も礼服で参列するのが基本です。
出棺の儀には、告別式に参加する人を中心に、参加できる人が参加します。近所の人も、比較的親しい人は参加します。参加者のイメージは、東京の通夜に近いでしょうか。
最近は、通夜は友人や近所の人など幅広く参加して、告別式は親しい人、というやり方が多いと思いますが、この地域では、友人や近所の人は日中に弔問に駆けつけ、納棺は親戚だけ、出棺と告別式は友人や近所の人を含めて幅広く、五七日の法要はその中からある程度選別した人、という感じでした。
棺を閉じて、お別れをし、そのまま火葬場に向かいます。
火葬場に向かうために斎場を出たタイミングで、告別式には参列しない近所の人が、最後のお見送りに斎場の入口付近で待っていてくれたので、簡単にお礼と挨拶だけします。
13. 火葬
火葬場には、僧侶が来て、読経をします。
火葬は、2時間程度で終わります。
お昼の時間にかかる場合は、昼食を出します。
このあたりは、最初の葬儀社との打ち合わせの時に決めます。
14. 告別式(僧侶: 御布施料)
火葬が終わったら、告別式です。
告別式は受け付けをします。受け付けは、近所の人や親戚にお願いしておきます。
告別式には、声を掛けた人以外に、突然来る人もいます。近所の人や、友人や会社の同僚など、幅広い人が参加します。誰でも自由に参加できるので、参加者のイメージは東京の通夜に近いと思います。
告別式は葬儀社が進行してくれるので、流れに乗れば大丈夫です。
曹洞宗の僧侶の御布施
僧侶は、五七日の食事まで参加します。御布施は僧侶が帰るときに渡してもいいですが、告別式の前に渡しても大丈夫です。告別式の前に渡したほうが、葬儀に集中できるのでいいと思います。葬儀社の人に伝えておくと、僧侶が到着したら知らせてくれます。
檀家でない場合には、相場が分からないので、あらかじめ僧侶の方に御布施の相談をしておくといいでしょう。最初の打ち合わせのときか、告別式の前がいいと思います。告別式の日に打ち合わせをする場合は、現金は多めに用意しておきましょう。
一般的に、曹洞宗は、他の宗派に比べて御布施料は高目だと言われています。
お寺との関係にもよりますが、今回の地域では、40万円~60万円が相場のようでした。
御布施の包み方、渡し方は、最初に解説したお車代と基本的に同じです。「御車料」のところを「御布施」に書き換えます。最近では、斎場に袋が用意されていることが多いので、それを使えば大丈夫です。
15. 五七日の法要
告別式が終わったら、すぐに五七日の法要を行います。告別式だけで終わりの人は、ここでお見送りします。香典返しも渡します。
告別式のあとに行う五七日の法要に参加して貰う人には、あらかじめ声をかけておきます。食事の用意が必要なので、人数の把握が必要です。基本的には、告別式に参加した人で、参加できる人には参加してもらうというイメージです。会社から代表で参加した人など、義理的に?参加している人には、五七日には参加してもらう必要はありません。
五七日に参加してもらう人には、あらかじめ声をかけて置きます。
五七日に参加する人には、香典返しの他に、返礼品をお渡しします。
地域の人は、告別式の香典と五七日の香典を分けて持ってきます。遠くから参加する人は、当然、このやり方を知らないので、香典は1つにまとめて持ってきます。受付が混乱しないように、注意しましょう。
受付の名簿を作成するときに、告別式への参加の有無、五七日への参加の有無をあらかじめ記載しておくといいでしょう。
五七日の法要では、僧侶がお経を唱えて、焼香をして、終わりです。
16. 五七日の食事
五七日の法要が終わったら、食事を振る舞います。一般的な、告別式のお斎(おとき)と同じようなイメージで考えておけば大丈夫です。
五七日の食事が終わったら、帰り際に、告別式の香典返しと、五七日の返礼品をお渡しします。