経済産業省が9日に発表した内容によると、福島第一原発事故の処理費用は、従来見込みの11兆円から約2倍の21.5兆円に膨らむ見込みです。
ちなみに、日本の税収は57兆円程度なので、税収の4割近くと同額です。
費用は大きく「廃炉」、「賠償」、「除染」、「中間貯蔵」の4つの内容に分けられます。
福島第一原発事故の処理費用と予算内訳
- 廃炉 従来予想:2兆円 今回予想:8兆円 予算:東電負担(実質未定)
- 賠償 従来予想:5.4兆円 今回予想:7.9兆円 予算:利用者負担(新電力も)
- 除染 従来予想:2.5兆円 今回予想:4兆円 予算:東電株の売却益(株価が上がる前提)
- 中間貯蔵 従来予想:1.1兆円 今回予想:1.6兆円 予算:税金
大きな問題は4つあります。
1. 廃炉費は未知数。増加の可能性も。
1つ目は「廃炉」の費用についてです。
廃炉費は8兆円の予想となっており、従来予想の4倍に膨れ上がっています。
現在、原子力内の様子は全く分かっておらず、燃料デブリを取り出す方法も確立されていません。
東電は「廃炉は世界でも未踏の分野」としており、これまでの事例から予算を算出することができません。
今回、「賠償」、「除染」、「中間貯蔵」の範囲も増えていますが、これは、「状況が変わったから」、「当初の見積りが甘かった」という理由です。もちろん、今後も状況の変化により増える可能性がありますが、少なくとも現時点の予想費用は、経済産業省がこれまでの実績をベースに予想したものであり、全く根拠がないわけではありません。
一方、「廃炉」の費用は、どうなるか、やってみないと誰にも分からない状況です。
廃炉費用は大幅に増える可能性が高いと思います。
2. 廃炉費の予算は未定
現在、廃炉費は東電が自力で負担する想定です。
しかし、現時点の収益体制では負担できる見込みは立っていません。
そこで、「大胆な提携、統合で収益を向上」して、負担する、というのが現在の計画です。
この計画が上手く行く見込みは少ないと思います。
将来的に、利用者負担、税金割当になる可能性があります。
3. 賠償費用は新電力の利用者も負担
賠償費用については、原発を持つ大手電力だけではなく、原発を持たない新電力の利用者も負担することになりました。
国民負担、ということです。
4. 除染費用は株価が上がらないと…
除染費用は国が保有している東電株を売却し、その売却益でまかなう予定です。
東電の株価上昇が前提となっており、将来的に東電の株価が上昇しなければ、予算の未投資は立ちません。
将来的に、利用者負担、税金割当になる可能性があります。
まとめ
廃炉は人類未踏の挑戦であり、廃炉費8兆円は「計算」というよりも、「想像」の範囲内のため、まだまだ増える可能性があります。
廃炉費用は東電の自己負担の想定ですが、東電の収益力が大幅に向上しないと難しい状況です。
賠償費用は原発を持たない新電力の利用者も負担することになりました。
除染費用は東電の株価が上がることが前提であり、株価が上がらなければ予算の見通しはありません。