エリザベス2世(2015年3月に撮影)
(写真:Wikipedia、OGL v.3)
1998年、サウジアラビアのアブドラ皇太子はイギリス王室の所有地にあるスコットランドのバルモラル城を訪れていました。
アブドラ皇太子は当時73歳、国王に即位する前でしたが、ファハド前国王が病床にあったため、事実上サウジアラビアの実権を握っていました。
昼食が済むと、エリザベス女王は客人であるアブドラ皇太子を領地内の見学に誘いました。
エリザベス女王は1926年生まれ、当時72歳です。
王室専用のランドローバーが城の正面玄関に横付けされ、アブドラ皇太子は促されるまま助手席に乗り込みます。
すると、エリザベス女王は自ら運転席に乗り込み、ランドローバーのエンジンをかけ、ハンドルを握りしめ、アクセルを踏みました。
驚く皇太子をよそに、女王はただランドローバーを運転するのではなく、領地内の道をものすごい音を立てて飛ばし、お喋りまでしたのです。
不安になった皇太子は、後部座席に同乗している通訳を通じて、スピードを落として目の前の道に集中して欲しい、と頼んだほどです。
女王の運転好きはイギリス国内では広く知られています。
エリザベス女王は第二次世界大戦中、イギリス本土が空襲を受ける中、英国女子国防軍に入隊し、軍用車両の整備や弾薬管理などに従事したほか、大型自動車の免許を取得し、軍用トラックの運転も行っていました。
2015年には、日曜ミサに向かう際にSUVを運転している姿を、ウィンザー大公園を散歩していた子連れの夫婦に目撃されています。公園内の道路を散歩していた夫婦が自分たちの世界に入り込んで後ろから近づく女王の車に気が付かないでいると、女王は舗装された道から芝の上に乗り上げ、夫婦を脇から追い越していきました。夫婦が車を運転しているのが女王だと気づくと、女王はニッコリと笑って手を振り、走り去っていきました。
最近では2016年、90歳のときにキャサリン妃の両親をバルモラル城に招待し、夫婦を車に乗せて、自らスコットランドの雄大な風景を案内しています。
一方のサウジアラビアは、世界で唯一、現在でも女性の運転が禁止されている国です。
女王は、どんな相手であっても、客人と会うときは非の打ち所のない振る舞いを見せます。しかし、ときには自らの行動で厳しいメッセージを送ることがあります。
女王は、サウジアラビアの制度に対する自らの見解を、行動で示したのです。