「2016年マーケットはどう動く 岡崎良介の投資戦略」を読みました。
岡崎良介さんによる、2015年の総括と2016年の予想です。特に、原油価格の下落による影響、量的緩和による影響、ドル円為替相場にスポットが当てられています。
前半部分を中心に、いくつか気になった点をメモしておきます。2015年の詳しい振り返りと、2016年の予想については書籍をご覧ください。
目次
本書の目次です。
- 2015年を振り返って
- ほぞ全員が間違えた2015年
- 原因を中国のせいにすると本質を見誤る
- 原油価格の下落が物語るもの
- 米国の量的緩和と原油市場の関係
- みんあ量的緩和のおかげだった
- 全ては米国を救うための政策であった
- 米国を救うべき理由
- 異質な動きを見せた日本
- 原油価格下落の恩恵
- サンマもトマトも郵便物もなぜ安くならないのか?
- 構造改革とはなにか
- 投資と選挙は似ているか?
- 結果にコミットする時代
- 約束が守れなかった2015年
- M&A投資は設備投資ではない
- ポートフォリオリバランス効果はあったのか?
- 家計は微力ながらも景気回復に貢献している
- 企業は借金を減らし続けている
- お金を使わない日本
- 繰り返してはならないFRBの失敗
- 設けさせてくれるのが良いセントラル・バンカーか?
- 試練に立たされる中央銀行
- そして何もかもが下がり始めた
- 原油と金が同時に下がる時代
- 原油と金が同時に下がった背景は?
- 可能性として考えておきたい破綻のリスク
- ほぞ全員が間違えた2015年
- 2016年を予想する
- 歪められた長期金利
- 米国の引き締めと長期金利上昇が示唆するもの
- 1ドル110円割れの衝撃
- 量的緩和でローテーションはどう崩れたのか
- 利上げなしのドル高
- 量的緩和がドルをタイトにした可能性
- 円安ドル高トレンドの終焉
- ドルの受給はいつタイトになったのか
- 大きな円高への動きが始まる可能性
- ドル安によって米国景気は加速する
- ユーロが高くなれば中国経済が成長する
- 諸悪の根源は日応の量的緩和政策だった
- 日銀とECTは何を間違えたのか
- 最長記録を更新した円安トレンド
- ドル/円相場のローテーション
- 政策が歪めたローテーション
- リーマンショックは再現するのか
- 次のカナリアを探せ
- 2016年相場反転のイメージ
- 長期金利が跳ね上がるとき、世界の破滅が待っている
- 投資の春夏秋冬
- 再出発のとき
- 2016年の政治的課題
- 歪められた長期金利
色あせたアベノミクス
アベノミクスとは、日本銀行の金融政策に頼った、円安誘導でした。
そういう意味では、アベノミクスは成功しました。為替は80円から125円になり、50%以上のドル高円安が進みました。株価は8,000円から20,000台へと2.5倍に上昇しました。でも、実体経済には何の影響も与えませんでした。
もちろん、円安により輸出企業の業績は大幅に良くなりました。
しかし、日本銀行のコミットである「2年間で消費者物価上昇率を2%にする」は達成されず、企業の国内設備投資や消費もあまり増えませんでした。
「好業績」、「株高」を演出することには成功しましたが、これは円安の間だけの一時的なものです。
現に、円高が進んだ2016年6月には、ドル円は98円台になり、日経平均は一時的に15,000円を割りました。
当然です。今の日本が抱えている問題は、金融問題ではなく、構造問題なのです。
構造問題はたくさんあります。少子高齢化、長時間労働、低生産性、優秀な人材の海外流出、海外の優秀な人材の不足、男女の賃金格差、終身雇用の幻想、非正規労働者の増加、転職回数の少なさ、ITリテラシーに低さ、仕事をする上で必要な能力がほとんど身につかない教育制度などです。
アベノミクスは、日本銀行の量的緩和という金融政策に頼ることにより、円安、株高の演出には成功しました。しかし、円安効果による輸入企業の好業績以外、実体経済にはさしたる効果は見られませんでした。しかも日本銀行は「2年間で消費者物価上昇率を2%にする」というコミットメントを果たせませんでした。円安効果が終わった今、株価は下落し、構造問題は放置されたまま、実体経済はアベノミクス以前のままです。
なぜ原油価格が下がっても、日本のガソリン価格はあまり下がらないのか
原油価格とガソリン価格を指数化して、2011年から2015年まで比較しています。2011年の価格を100とすると、原油価格は2015年には50近くまで下落しています。しかし、ガソリン価格は85くらいまでしか下落してません。
なぜ、原油価格は大きく下がっているのに、ガソリン価格はあまり変わらないのでしょうか。
それは、ガソリンに税金がかかっているためです。
日本のガソリンには1リットルあたり53.8円の税金がかかっています。
ガソリン価格は税金という固定費がかかっているため、原油価格という変動費の影響が小さくなってしまうのです。
覚えているでしょうか。
原油価格が高かったときには、燃料費が高騰して漁に出ることができない漁師さんがよくニュースで特集されていました。温室栽培の暖房費の高騰に苦しむイチゴやトマト農家さん、トラックのガソリン代に苦悶する宅配や陸運業者が紹介されていました。
今、原油価格は安くなりました。
本来であれば、これらの人々は大きな恩恵を受け、お財布も潤っているはずです。しかし、ガゾリン税という固定費があるため、いくら原油価格が安くなっても、以前ほど苦しくなはないとしても、恩恵を受けたというほどの好影響はありません。
これも、既得権益を守るために、経済活動に余計なコストが発生し、アンバランスになっている、ひとつの構造問題です。
M&Aは実体経済に影響を与えない
M&Aは、新規の設備投資ではなく、単なる所有権の移動です。
間接的には企業活動が大きく、効率的になることで実体経済に影響を与えることはありますが、直接的な影響はありません。
M&AはGDP上は何もカウントされないのです。
日銀当座預金残高は増えたが、企業の借金は増えていない
企業の新規投資が盛んになると、銀行からの融資が増えます。
日銀の量的緩和は、金融機関から大量の国債を買い取り、マネーを増やすことで、金融機関の融資を増やし、企業の新規投資を増やすことが狙いでした。
しかし、現実には金融機関が日銀に預けてある、日銀当座預金は30兆円から220兆円まで増えましたが、企業の借金は増えるどころか減り続けています。
いくらお金を借りやすい環境を作っても、企業はお金を借りてまで新規事業活動をしようとは考えなかったのです。