アビオメッド(ABMD)は急性心不全患者のための補助人工心臓を提供する医療機器メーカーです。
同社の主力製品「インペラ(IMPELLA)」は、世界最小のカテーテル式補助人工心臓で、重症の心不全患者のために使われます。
急性心筋梗塞などによって身体に血液を送り出す心臓のポンプが十分に機能しなくなり、生命が危険な状態に至った場合に、心臓の代わりに一時的に血液循環を行います。
短時間で挿入することが可能で、緊急を要する急性心筋梗塞の治療法として大きな効果があります。
すでにアメリカやヨーロッパでは広く普及しており、日本でも2017年9月から導入が始まりました。日本では19施設(2017年10月現在)がインペラ実施施設として認定されています。
インペラの普及により、同社の業績は急成長しています。
アビオメッド(ABMD)の評価
成長性 | ○ | 毎年10~15%のペースで売上高が増加 新たな治療法として世界中の医療機関で導入が進められている |
---|---|---|
差別化 | ○ | 「インペラ」は20年ぶりの革新的なテクノロジー 特許などで守られている |
利益率 | ◎ | 営業キャッシュフロー・マージン25%以上 導入施設が増えるほど安定的な収益が見込めるストックビジネス |
不景気耐性 | ○ | 医療機器なので不景気の影響はあまり受けない |
決算 | △ | 2018年3月(第4四半期)の決算は素晴らしかった 2018年6月(第1四半期)の決算で利益がわずかに予想を下回った |
総合評価 | ○ | 20年ぶりの革新的なテクノロジー 特許で守られており、利益率が高い 既にアメリカ、ヨーロッパではある程度普及している 日本でも2017年9月から導入開始、今後の普及が期待できる 導入施設が増えるほど安定的な収益が見込めるストックビジネス |
◎・○・△・×の4段階で評価
最終更新日:2018/09/09
心臓に優しい、パワフルな医療機器「インペラ」
(写真 インペラ)
「インペラ」を使った治療は先進医療として、大きな注目を集めています。
インペラは、脚の大腿動脈から挿入し、血管内を進みます。心臓までたどり着くと、左心室内から血液を一定のスピードで吸い上げ、小型のモーターによって血液を大動脈へ送り出します。
これまで急性心筋梗塞の治療には、IABP(大動脈内バルーンパンピング)やPCPS(遠心式体外循環用血液ポンプ)などの機器が使われてきました。
しかし、特に重症の心不全に用いられるPCPSは、本来血液が流れる方向に対して、逆の方向に血流を起こすため、心臓に大きな負担がありました。
インペラは、左心室から大動脈へと、本来の流れに沿った血液の循環をサポートします。さらに、IABPやPCPSに比べて多くの血流をサポートすることができるので、疲労した心臓を十分に休ませることができ、心機能の回復が期待できます。
インペラの登場により、今まで助からなかった心筋梗塞患者の治療が可能となり、救命率が上がると考えられています。また、心筋梗塞の後遺症としての心不全などの発症が低減し、患者の術後の生活レベルの向上が期待されます。
インペラは現在、世界中の医療機関で急速に導入が進められており、今後、症例数が増えて研究が進むと、どんな患者に効果があるのか、どんなメリットがあるのかなどがより明らかになっていくと考えられています。
20年ぶりの革新的なテクノロジー
(写真右 インペラ制御装置)
心臓補助循環デバイスの分野では、過去20年間、新しいテクノロジーは出現していませんでした。そのため、治療の選択肢は限られ、新しいテクノロジーの登場が待望されていました。インペラは急性心不全の治療の新たな選択肢として、世界中の医療機関で導入が進められています。
過去20年間心臓補助循環デバイスでは新しいテクノロジーは出現しませんでした。インペラは急性心不全の治療の新たな選択肢として、米国で普及しており、本邦でも待ち望まれたテクノロジーです。今後はインペラによる心原性ショックなどの急性心不全患者の救命率や治療成績の向上が期待できます。
(大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座心臓血管外科学の澤 芳樹教授)
世界中の医療機関で導入が進む
アビオメッドは1981年創業の医療機器メーカーで、様々な人工心臓装置を開発、販売してきました。NASDAQには1987年に上場しています。インペラは、もともと、2005年に買収したドイツのインペラ・カーディオシステム社(Impella CardioSystems AG)の製品でした。現在は、アビオメッドの主力製品になっています。
アビオメッドはインペラの開発、普及に注力しており、同社の売上のほぼ100%がインペラによるものです。
インペラの販売は2004年にドイツ、ヨーロッパで開始され、アメリカでは2008年にFDAの承認を得て販売を始めました。既にヨーロッパ・アメリカでは広く普及しており、日本でも2017年9月から導入が始まっています。日本では、19施設(2017年10月現在)がインペラ実施施設として認定されています。
インペラは現在、血圧の著しい低下など、緊急性の高い患者に対して、3~5日間を目安に使用されています。今後は、心臓移植を待つ患者への使用も期待されています。年齢などによる使用制限はありません。
アビオメッドの決算
アビオメッドの決算月は3月です。
- DPS:1株あたり配当
- EPS:1株あたり利益
- CFPS:1株あたり営業キャッシュフロー
- SPS:1株あたり売上高
- マージン:営業キャッシュフロー・マージン
年月 | DPS | EPS | CFPS | SPS | マージン |
---|---|---|---|---|---|
2015年3月 | 0.00 | 2.65 | 1.07 | 5.67 | 19% |
2016年3月 | 0.00 | 0.85 | 1.71 | 7.34 | 23% |
2017年3月 | 0.00 | 1.17 | 2.58 | 9.97 | 26% |
2018年3月 | 0.00 | 2.45 | 4.20 | 12.95 | 32% |
配当は無配方針です。利益、営業キャッシュフロー、売上高ともに増加しています。さらに、営業キャッシュフロー・マージンも増加傾向にあり、直近では30%を超えています。つまり、ものすごく、儲かりやすい体質で、しかも、その体質が年々改善している、ということです。これは素晴らしいことです。
インペラのカテーテルは消耗品なので、一度、病院施設に導入されれば、継続的な需要が期待できます。導入施設が増えるほど、安定的な収益が見込める、ストックビジネスと言えます。
アビオメッドの四半期決算
四半期 | EPS | 売上高 | EPS サプライズ |
売上高 サプライズ |
EPS 前年同期比 |
売上高 前年同期比 |
---|---|---|---|---|---|---|
Q4 2017.03 | 0.4 | 1.24億ドル | +14.29% | +1.78% | +66.67% | +32.70% |
Q1 2017.06 | 0.45 | 1.32億ドル | +7.14% | +1.21% | +55.17% | +28.62% |
Q2 2017.09 | 0.44 | 1.32億ドル | +15.79% | +1.43% | +120.00% | +29.01% |
Q3 2017.12 | 0.7 | 1.54億ドル | +40.00% | +4.12% | +105.88% | +34.31% |
Q4 2018.03 | 0.8 | 1.74億ドル | +25.00% | +6.16% | +100.00% | +39.91% |
Q1 2018.06 | 0.78 | 1.80億ドル | -4.88% | +3.89% | +73.33% | +35.89% |
※EPSは「1株あたり利益」のことです。
※サプライズはアナリストの事前予想平均に対して、実際の結果がどれくらい上回ったか、もしくは下回ったかを表します。プラスならポジティブサプライズ、マイナスならネガティブサプライズとなります。
アビオメッドの株価
最新の株価チャート:ABMD