ティファニー(TIF)は180年の歴史を誇る高級ジュエリーブランドです。本社はニューヨークにあります。S&P500の構成銘柄に選ばれていて、全世界に300店舗以上を展開、13,000人の従業員を抱えるグローバル企業です。
伝統的なブランドイメージを守るために、どちらかというと保守的なマーケティングを展開することが多かったティファニーですが、新CEOにブルガリ元幹部のアレッサンドロ・ボリオーロを迎え、若者向けの商品ラインナップの充実やマーケティング戦略の刷新など、大胆な戦略を打ち出しています。
ティファニー(TIF)の評価
成長性 | △ | ティファニーの業績はここ数年低迷 ブランドイメージの若返りを図っていて業績は回復傾向 |
---|---|---|
差別化 | △ | ブランド力はあるが高級ジュエリーは強豪が多い カルティエ、ブルガリ、ハリーウィンストンなど |
利益率 | ◎ | 業績低迷でも営業キャッシュフロー・マージンは20%前後を維持 利益率の高い高級ジュエリーを、値引きをせずに販売する方針 |
不景気耐性 | × | 高級服飾品のため不景気に弱い |
決算 | ○ | 2018年4月(第1四半期)の決算は素晴らしかった 2018年7月(第2四半期)の決算は良かった |
総合評価 | △ | 売上は景気、流行に左右される 業績低迷でも利益率は高い ブランドイメージの若返りを図っていて業績は回復傾向 最近発表した本店リニューアルの影響が心配 |
◎・○・△・×の4段階で評価
最終更新日:2018/09/26
世界中の人が知っているティファニーブランド
ティファニーは、「世界5大ジュエラー」と呼ばれる高級ジュエリーブランドの中で、最も歴史のあるブランドであり、世界中で広く認知されています。
世界5大ジュエラー(創業年順)
- ティファニー(1837年:アメリカ)
- カルティエ(1847年:フランス)
- ブルガリ(1884年:イタリア)
- ヴァンクリーフ&アーペル(1906年:フランス)
- ハリーウィンストン(1932年:アメリカ)
ティファニーはこれまでの長い歴史の中で、その後のジュエリーデザインに大きな影響を与えるような、革新的なジュエリーをいくつも世の中に送り出してきました。
例えば、一粒のダイヤモンドを6本の立て爪によりセッティングする「ティファニーセッティング」は、その名の通りティファニーが考案したもので、現代の結婚指輪の主流になっています。
1837年9月14日、チャールズ・ルイス・ティファニーとジョン・B・ヤングの二人は、ニューヨークのブロードウェイ259番地にその前身となる「ティファニー・アンド・ヤング」という会社を設立しました。当初は文房具や装飾品を主に扱っており、オシャレな雑貨店という印象のお店でした。開業初日の売上は4.98ドルでした。
ティファニーを象徴するカラー、「ティファニーブルー」はこのときに誕生します。
チャールズ・ルイス・ティファニーは、ティファニーの製品を購入した人だけが手にできる特別な包装箱をつくりたいと考え、「ティファニーブルー」で彩られたティファニーブルー・ボックスを考案しました。
ティファニーブルーの色は、コマドリの卵に由来します。コマドリの卵は目が醒めるような美しい青色です。ヴィクトリア朝のイギリスでは、大切な土地の資産を記録する台帳の表紙に、コマドリの卵の青色が使われていました。大切なものを表す色として使われ、真実や高潔さのシンボルでした。
ティファニーブルーはティファニーの代名詞となり、大切な人への贈り物として、人々を魅了し続けることになります。
ティファニーが本格的にジュエリーを扱うようになるのは、創業から10年を過ぎたころです。
1848年、フランスで二月革命が起こり、資金を必要としている貴族から宝石を買い取ることで、宝石事業に進出しました。この事業が成功し、ティファニーはジュエリーブランドとしての地位を築いていくことになります。
1853年には創業者の一人、チャールズ・ルイス・ティファニーが会社の全権を握り、社名を今の「ティファニー(Tiffany & Co.)」に改称しました。
1940年には本店をニューヨークの5番街に移転します。この店は、1961年にオードリー・ヘプバーンが主演した映画『ティファニーで朝食を』の舞台になり、ニューヨークの観光名所の一つにもなりました。現在でも多くの観光客が訪れ、本店はティファニーにとって重要なフラッグシップショップになっています。
ティファニー本店の売上は、世界全体の売上の10%未満と公表されています。つまり、本店はたったの1店舗で、300店舗以上ある世界全体の、10%に近い売上を上げていることになります。
昨年には、本店の4階にティファニーブランド初となるカフェ「ザ・ブルー・ボックス・カフェ」がオープンしました。壁面には大理石とアマゾンナイトストーンが使用されており、ソファーはティファニーブルーに彩られています。ラグジュアリーな空間で朝食やランチ、スイーツを楽しみながら、優雅な気分ですごすことができます。
公式サイトで1ヶ月先まで予約を受け付けていますが、大変な人気で、常に予約でいっぱいの状況です。
ティファニーの歴史の中で、最も有名なジュエリーデザインの一つは「オープンハート」です。今から30年以上前に考案されたこのデザインは、1970年代のモダンな女性たちの心を捉え、現在でも世界中で愛されています。
ティファニーはジュエリーに興味がなくてもその名を知らない人はいないほどの知名度があり、それはティファニーが長い歴史の中で紡いできたものです。これこそがティファニーブランドの価値なのです。
新CEOボリオーロが進める新マーケティング戦略
ティファニーは2017年10月にアレッサンドロ・ボリオーロを新CEOに迎えました。ボリオーロはブルガリの元幹部で、直近では衣料品大手のディーゼルでCEOを務めたていました。ブランド戦略のプロフェッショナルです。
ティファニーの業績はここ数年、低迷していました。消費者を惹きつけるような魅力的な商品や価値観を提案できなかったことが要因です。また、フラッグシップショップであるニューヨーク五番街の本店が、トランプ・タワーのすぐ隣りにあるために、大統領選挙期間中、そして、トランプ大統領が誕生してからの警備やデモ行進により、顧客が遠のいたことも原因の一つです。
ティファニーは、伝統的なブランドイメージを守るために、これまでは保守的なマーケティングを展開してきました。ボリオーロは新CEOに就任すると、これまでのマーケティング戦略を見直し、新たに大胆な戦略を打ち出しました。
若者に訴求するキャンペーンを展開、ブランドイメージの若返りを図っています。
まず、アメリカの女優エル・ファニングを起用し、「Believe In Dreams(夢を信じて)」というキャンペーンを打ち出しました。彼女は現在20歳で、アメリカの若者に絶大な人気があります。2歳のときに「アイ・アム・サム」でスクリーンデビューし、子役として数々の映画やTVドラマ、CMに出演、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」「マレフィセント」で重要な役を演じ、さらに人気海外ドラマの「CSI:マイアミ」「HOUSE」「LAW & ORDER」にゲスト出演したキャリアがあります。
キャンペーンが始まると、ニューヨーク五番街の本店前にはティファニーブルーのタクシーが登場し、ミッドタウンがティファニーカラーで彩られました。
さらに、新たな商品ラインナップとして新作ジュエリーコレクション「ティファニー・ペーパー・フラワー」を発表しました。
ティファニー・ペーパー・フラワーはその名の通り、フラワー(花)をモチーフにしたジュエリーコレクションで、若者に向けたデザインです。ダイヤモンドのネックレスやピアス、リングなど豊富なバリエーションで展開します。若者が手にしやすいよう、従来のジュエリーコレクションよりも価格帯を下げています。
披露パーティーには、モデルのケンダル・ジェンナーをはじめとした多くの10代、20代のセレブが祝福に駆けつけました。
ティファニー・ペーパー・フラワーは、アメリカで既に販売が始まっており、今後世界に展開していく予定です。日本では2018年9月の発売開始を予定しています。
ティファニーの新たな試みは、現在のところ、消費者に好意的に受け止められています。
ティファニーの業績データ
ティファニーの店舗数推移
年度 | アメリカ | カナダ・南米 | アジア | 日本 | ヨーロッパ | その他 | 合計 | 前年比 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2013 | 94 | 27 | 72 | 54 | 37 | 5 | 289 | +14 |
2014 | 95 | 27 | 73 | 56 | 39 | 5 | 295 | +6 |
2015 | 95 | 29 | 81 | 56 | 41 | 5 | 307 | +12 |
2016 | 95 | 30 | 85 | 55 | 43 | 5 | 313 | +6 |
2017 | 94 | 30 | 87 | 54 | 46 | 4 | 315 | +2 |
2018年1月31日の時点で、ティファニーは全世界で315店舗を運営しています。店舗数は年々増加傾向にあります。地域別では、アメリカ94店舗、カナダ・南米30店舗、アジア87店舗、日本54店舗、ヨーローッパ46店舗、その他4店舗となっています。
ティファニーにとって、日本はアメリカに次いで、世界で2番目に重要な市場です。現在、勢いがあるのは中国や韓国などのアジア地域です。
ティファニーの地域別営業利益推移
年度 | 米州 | アジア | 日本 | ヨーロッパ | その他 |
---|---|---|---|---|---|
2013 | 374 | 244 | 216 | 102 | -2 |
2014 | 436 | 282 | 196 | 111 | 5 |
2015 | 391 | 264 | 200 | 97 | 6 |
2016 | 373 | 256 | 205 | 82 | 6 |
2017 | 390 | 286 | 207 | 86 | 6 |
(表示単位 100万ドル)
ティファニーにとって、最大の市場はアメリカです。2017年はアメリカでの売上が42%、その他の地域の売上が58%でした。2015年、2016年と営業利益は減少傾向にありましたが、2017年はすべての地域で回復の兆しが見られます。
ティファニーの地域別売上高内訳
地域 | ジュエリー | 婚約指輪 | デザイナーズ・ジュエリー | その他 |
---|---|---|---|---|
米州 | 54% | 21% | 14% | 11% |
アジア | 61% | 30% | 8% | 1% |
日本 | 31% | 38% | 22% | 9% |
ヨーロッパ | 61% | 24% | 12% | 3% |
全体 | 53% | 26% | 14% | 7% |
日本はほかの地域に比べて、婚約指輪、デザイナーズ・ジュエリーの売上比率が高いのが特徴です。デザイナーズ・ジュエリーは、デザイナーの名前を冠したコレクションのことです。日本以外の地域では、ジュエリーの売上比率が全体の半分以上を占めています。
ティファニーの地域別営業利益率
地域 | 営業利益率 |
---|---|
米州 | 21% |
アジア | 26% |
日本 | 35% |
ヨーロッパ | 18% |
その他 | 5% |
日本は他の地域に比べて営業利益率が高くなっています。婚約指輪やデザイナーズ・ジュエリーといった、利益率の高い商品がよく売れるためです。
ティファニーの地域別既存店売上高比較(前年比/為替要因を除く)
年月 | 世界全体 | 米州 | アジア | 日本 | ヨーロッパ | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|
2013 | 6% | 3% | 11% | 10% | 4% | 14% |
2014 | 4% | 6% | 4% | 1% | -1% | 8% |
2015 | 0% | -4% | 0% | 5% | 9% | -15% |
2016 | -5% | -5% | -7% | 5% | -9% | -15% |
2017 | 0% | 0% | -2% | 2% | -4% | 2% |
既存店売上高の比較です。2015年から2017年にかけて低迷しています。最新の決算では2018年は回復傾向にあります。
ティファニーのグロスマージン
年度 | グロスマージン |
---|---|
2013 | 58.1% |
2014 | 59.7% |
2015 | 60.7% |
2016 | 62.2% |
2017 | 62.5% |
グロスマージンは売上高から原価を差し引いた、売上総利益(粗利)のことです。
ティファニーにとっては、「高級感」が大切なブランド価値になります。近年の業績低迷の間も、既存商品を対象とした値引き販売は、ブランド価値を低下させるとして、実施しませんでした。
ティファニーは、高級ブランドとして強気の価格設定で、安易な値引きは行いません。そのため、とても高い利益率を維持しています。
ティファニーの決算
ティファニーの決算月は1月です。
- DPS:1株あたり配当
- EPS:1株あたり利益
- CFPS:1株あたり営業キャッシュフロー
- SPS:1株あたり売上高
- マージン:営業キャッシュフロー・マージン
年月 | DPS | EPS | CFPS | SPS | マージン |
---|---|---|---|---|---|
2015年1月 | 1.48 | 3.73 | 4.74 | 32.72 | 14% |
2016年1月 | 1.58 | 3.59 | 6.33 | 31.80 | 20% |
2017年1月 | 1.75 | 3.55 | 5.62 | 31.89 | 18% |
2018年1月 | 1.95 | 2.96 | 7.45 | 33.33 | 22% |
ティファニーの業績はここ数年低迷していました。
業績低迷の要因は、魅力的な商品を提供できなかったこと、そして、フラッグシップショップであるニューヨーク五番街の本店が、トランプ・タワーのすぐ隣りにあるために、大統領選挙期間中、そして、トランプ大統領が誕生してからの警備やデモ行進により、顧客が遠のいたことなどが挙げられます。
利益率の高い高級ジュエリーを、値引きをせずに販売する方針なので、業績低迷でも営業キャッシュフロー・マージンは20%前後を維持しています。
ティファニーは2017年10月、新CEOにアレッサンドロ・ボリオーロを迎えました。ボリオーロはブルガリの元幹部で、直近では衣料品大手のディーゼルでCEOを務めていたブランド戦略のプロフェッショナルです。
ティファニーはボリオーロ新CEOの元、伝統的で保守的だったティファニーのマーケティング戦略を見直し、若者に訴求するキャンペーンを展開、ブランドイメージの若返りを図っています。
ティファニーの四半期決算
四半期 | EPS | 売上高 | EPS サプライズ |
売上高 サプライズ |
EPS 前年比 |
売上高 前年比 |
---|---|---|---|---|---|---|
Q1 2017.04 | 0.74 | 8.99億ドル | +5.71% | -1.52% | +15.63% | +0.93% |
Q2 2017.07 | 0.92 | 9.59億ドル | +5.75% | +2.94% | +9.52% | +3.02% |
Q3 2017.10 | 0.80 | 9.76億ドル | +5.26% | +2.41% | +5.26% | +2.83% |
Q4 2018.01 | 1.67 | 13.34億ドル | +1.83% | +1.83% | +15.17% | +8.46% |
Q1 2018.04 | 1.14 | 10.33億ドル | +37.35% | +7.89% | +54.05% | +14.83% |
Q2 2018.07 | 1.17 | 10.76億ドル | +15.84% | +3.46% | +27.17% | +12.12% |
※EPSは「1株あたり利益」のことです。
※サプライズはアナリストの事前予想平均に対して、実際の結果がどれくらい上回ったか、もしくは下回ったかを表します。プラスならポジティブサプライズ、マイナスならネガティブサプライズとなります。
ティファニーの株価
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