エッツィ(ETSY) 全世界で3670万人が利用するハンドメイドマーケットプレイス

エッツィ(ETSY)

エッツィ(ETSY)は全世界で3670万人が利用する世界最大のハンドメイドマーケットプレイスです。ニューヨーク証券取引所には2015年4月にIPOしました。

2005年にアメリカで設立され、3470万人の購入ユーザーと、200万人の販売ユーザーを有します。サイト内では、5000万件以上のアイテムが販売されています。

エッツィはアメリカを中心に、世界中でサービスを展開しています。売上の65%がアメリカ、残りの35%がアメリカ以外の地域によるものです。日本でもサービスを提供していますが、日本ではそれほど知名度がありません。エッツィはアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツを重点地域としています。

同社は6月に取引手数料の値上げを含む、利益率を大きく改善する新戦略を発表しました。これらのサプライズを受けて、同社の株価は2017年末の21.03ドルから2018年6月の最高値45.88ドルへと+118%上昇しました。

ハンドメイドEC市場にはまだまだ成長余地がありますが、エッツィの成長速度は少しずつ鈍化しています。長期的には、現在の成長率を維持できるかどうかがポイントになります。

エッツィ(ETSY)の総合評価

成長性 流通総額、ユーザー数ともに年10%以上の成長率
成長率が少しずつ鈍化している
差別化 アメリカ最大のハンドメイドマーケットプレイス
アメリカ以外での知名度は地域によってマチマチ
利益率 過去3年の営業キャッシュフロー・マージンは12%~15%
取引手数料値上げにより利益率の向上が期待できる
不景気耐性 生活必需品ではないので景気の影響を受ける
決算 2018年3月(第1四半期)の決算は素晴らしかった
2018年6月(第2四半期)の決算で利益が予想を下回った
総合評価 アメリカ最大のハンドメイドマーケットプレイス
成長率が少しずつ鈍化している
今後は成長率を回復、もしくは維持できるかがポイント
取引手数料値上げなどの新戦略による利益率向上に期待

◎・○・△・×の4段階で評価
最終更新日:2018/10/10

世界最大のハンドメイドマーケットプレイス

エッツィは世界最大のハンドメイドマーケットプレイスです。

多くのクリエイターがエッツィでアクセサリーやファッションアイテムなどのオリジナルグッズを販売しています。

ハイクオリティなハンドメイドグッズが多くプレゼントや贈り物としても人気があります。

エッツィはAmazonで販売されているような大量生産の商品は扱いません。ほとんどのアイテムがエッツィでしか手に入らない一点物です。そのため、一般的なECサイトとは競合しません。

世界最大のハンドメイドマーケットプレイスであり、ほとんどの商品がエッツィでしか手に入らない、というのがエッツィの最大の強みです。

ハンドメイドのジュエリーは人気カテゴリーの一つです。
エッツィ

ビンテージ商品も販売されています。
エッツィ

Amazonハンドメイドマーケットプレイスの影響

Amazonは2015年10月にハンドメイドマーケットプレイス「Handmade at Amazon」をスタートしました。日本ではサービスを展開していません。Amazonがハンドメイド分野に参入したことで、エッツィにも大きな影響があるのではないかと懸念されましたが、今のところ、販売者や購入者がAmazonに流れるという現象は起きていません。

AmazonのハンドメイドマーケットプレイスがAmazon内の1カテゴリであるのに対し、エッツィはハンドメイド専用サイトです。エッツィの取り扱いアイテム数が5000万件以上あるのに対し、Amazonハンドメイドは数十万点程度です。

たとえば、「イヤリング(earings)」で商品を検索すると、Etsyでは2,873,062件のアイテムが見つかるのに対し、Amazonではわずか819件のアイテムしか見つかりません。

エッツィの検索結果「イヤリング(earings): 2,873,062件」

エッツィの販売アイテム

Amazon(Handmade at Amazon)の検索結果「イヤリング(earings): 819件」

Amazonの販売アイテム

もちろん、Amazonが今後ハンドメイド市場を強化することでエッツィの地位が脅かされるということは考えられますが、現在のところ驚異にはなっていません。

エッツィの料金プラン

エッツィの販売ユーザーの手数料は次のようになっています。

  • 出店料:無料
  • 出品料:0.2ドル(1商品ごとに発生/有効期限4ヶ月)
  • 販売手数料:5%
  • 決済手数料:3% + 0.25ドル(アメリカの場合)

一番手軽なスタンダードプランでは販売ユーザーは無料でエッツィに出店することができます。出店は無料ですが、商品を出品するごとに0.2ドルの出品料が発生します。出品期限は4ヶ月です。4ヶ月間商品が売れないと、また0.2ドルの出品料がかかります。さらに、商品が売れると5%の取引手数料と3%+0.25ドルの決済手数料がかかります。

エッツィの基本的な手数料を合計すると8%+0.45ドルになります。

日本で人気のフリマアプリ「メルカリ」の手数料は、販売手数料10%となっています。決済手数料は販売手数料に含まれているのでかかりません。他のハンドメイドマーケットやフリマアプリも、似たいような費用感なので、手数料に大きな差はありません。

エッツィが特徴的なのは、商品を掲載する際に「出品料」が必要なことです。出品料は0.2ドルと少額ですが、通常のハンドメイドマーケットは商品を多く出品して欲しいので、出品料を無料に設定しています。無料にすると商品の数は増えますが、同時に質の低い商品も増えてしまいます。

商品の出品に少額でも手数料がかかるとなると、あまり売れそうもない商品、質の低い商品を出品しようとは思いません。エッツィはあえて少額の出品料を設定することで、出品される商品の品質を保っています。質の高い商品が多いので、購入ユーザーも集まるという仕組みです。

利益率を大きく改善する新戦略

エッツィは2018年6月、利益率を大きく改善する新戦略を発表しました。

具体的には、①取引手数料の値上げ、②販売者向けの月額課金プランの新設です。

新戦略の発表と同時に、2018年のガイダンスを上方修正しました。

取引手数料の値上げが業績を大きく改善

エッツィは2018年7月16日付けで、手数料体系を大きく見直しました。

まず、取引手数料をこれまでの3.5%から、5%に値上げしました。

さらに、今まで取引手数料の対象は商品価格だけでしたが、今後は配送料に対しても5%の取引手数料がかかります。

現状、ハンドメイドマーケット、特にエッツィの売上の65%を占めるアメリカのハンドメイドマーケットにおいて、エッツィに替わる規模のサービスは存在しません。

業界で圧倒的な支配力があるからこそできる、強気の価格改定です。

3.5%から5%の値上げは一見、収益に大きな影響を与えないように目ますが、利益が売上ベースで1.5%増えることになるので、利益率が大きく改善します。

エッツィは、取引手数料の値上げによる収益の一部を、購入ユーザー獲得のためのマーケティング費用などに投資するとしています。

2つの月額課金プランを新設

これまで、販売ユーザーはエッツィに無料で出店することができました。この無料出店プランはスタンダードプランとして今後も継続します。スタンダードプランでも、商品の販売、決済、配送に必要な基本的なサービスはすべて揃っています。

エッツィは、スタンダードプランとは別に、プラスプランとプレミアムプラン、2つの月額課金プランの新設を発表しました。

月額課金プランの導入により、エッツィは毎月、安定した売上とキャッシュを得ることができます。

プラスプランは既に導入されており、月額10ドルで利用できます。この価格は期間限定のお試し価格で、2019年1月には月額20ドルに値上げ予定です。

プラスプランには、次のサービスが含まれています。

  • 広告掲載の無料クレジット
  • ショップのカスタマイズ機能
  • ショップ オリジナルドメインの利用
  • 在庫補充通知機能
  • 配送ボックスの割安購入
    など

プレミアムプランは2019年に導入予定です。価格やサービス内容は未定です。

2018年のガイダンスを上方修正

これらの新戦略により、同社は2018年のガイダンスを上方修正しました。

  • 総流通額成長率:16%-18%16%-19%上方修正
  • 売上高成長率:22%-24% → 32%-34%上方修正
  • 営業キャッシュフロー・マージン:21%-23% → 21%-23%変更なし

営業キャッシュフロー・マージンについては、新戦略のための投資費用やマーケティング費用がかかるため、今期は変更無しとなっています。新戦略が成功すれば、来季以降は営業キャッシュフロー・マージンも増加が期待できます。

エッチィの業績データ

エッツィの流通総額

エッツィの流通総額

年月 流通総額 前年比
2014年 19億ドル +43%
2015年 23億ドル +24%
2016年 28億ドル +19%
2017年 32億ドル +15%

流通総額は年々成長していますが、成長率は年々鈍化しています。今後は成長率を維持できるかがポイントです。

なお、エッツィはアメリカ国内で売上の65%を上げており、残りの35%はアメリカ以外での売上です。

エッツィのアクティブ購入ユーザー数

エッツィのアクティブ購入ユーザー数

年月 アクティブ購入ユーザー 前年比
2014年 1,981万人 +41%
2015年 2,405万人 +21%
2016年 2,857万人 +19%
2017年 3,336万人 +17%

アクティブ購入ユーザーとは過去1年以内にエッツィで買い物をしたユーザーことです。登録していても、過去1年以内に買い物をしていないユーザーはカウントしません。

アクティブ購入ユーザーは順調に増加していますが、成長率は少しずつ鈍化しています。2017年の成長率は+17%でした。成長率を維持できるかがポイントです。

エッツィは購入ユーザーを呼び込むためのダイレクトマーケティングに力を入れています。2017年には7800万ドルを投資しました。2018年は投資額をさらに40%増やす計画です。

エッツィのアクティブ販売ユーザー数

エッツィのアクティブ販売ユーザー数

年月 アクティブ販売ユーザー 前年比
2014年 135万人 +26%
2015年 156万人 +16%
2016年 175万人 +12%
2017年 193万人 +11%

アクティブ販売ユーザーとは過去1年以内にエッツィに何らかの支払いをした販売ユーザーのことです。販売ユーザーとして登録していても、過去1年以内にエッツィに支払いをしていないユーザーはカウントしません。エッツィに商品を出品するには出品料がかかるので、アクティブ販売ユーザーは「過去1年以内にエッツィに商品を出品したユーザー」と言い換えることができます。

アクティブ販売ユーザーは順調に増加していますが、成長率は少しずつ鈍化しています。昨年の成長率は+11%でした。

エッツィの売上高内訳

エッツィの売上高内訳

出品料 + 販売手数料 前年比 販売ユーザー向け有料サービス 前年比
2013年 78,544 +42% 42,817 +170%
2014年 108,732 +38% 82,502 +93%
2015年 132,648 +22% 136,608 +66%
2016年 158,204 +19% 200,857 +47%
2017年 179,492 +13% 258,453 +29%

エッツィの売上の内訳は、「出品料 + 販売手数料」と「販売ユーザー向け有料サービス」の大きく2つに別れます。2014年までは「出品料 + 販売手数料」の売上の方が大きかったのですが、2015年に逆転し、2017年には「販売ユーザー向け有料サービス」の売上が売上全体の59%を占めています。

ともに高い成長率ではありますが、年々成長が鈍化しています。この成長率を維持できるかが今後のポイントです。

販売ユーザーの有料サービス利用率

販売ユーザーの有料サービス利用率

エッツィは販売ユーザー向けに、決済や広告、配送ラベルの印刷などの有料サービスを提供しています。上のグラフは過去1年以内にエッツィを利用したアクティブ販売ユーザーの有料サービスを利用率です。アクティブ販売ユーザーの54.3%が、これら4つの有料サービスのうち、いずれか一つ以上を利用しています。

  • 決済サービス(Etsy Payments):エッツィの決済サービスが導入されている地域では、決済は基本的にエッツィの決済サービスを利用することになります。約半数の販売ユーザーがエッツィの決済サービスを利用しています。
  • 広告(Promoted Listings):エッツィのサイトに広告を表示するサービスです。約15%の販売ユーザーが利用しています。
  • 配送ラベル(Shipping Labels):アメリカとカナダの販売ユーザー限定のサービスです。配送料金をエッツィのサイト内で支払い、配送ラベルの印刷ができます。アメリカとカナダの販売ユーザーのうち、およそ28%が利用しています。
  • オリジナルEC(Pattern):月額15ドルでオリジナルのショップサイトを運営できるサービスです。Patternを使えばこんなサイトを簡単に作成できます。エッツィで商品を販売するだけはなく、自分のショップサイトを持ちたいという販売ユーザーが利用します。約2.5%の販売ユーザーが利用しています。

エッチィの決算

エッチィの決算月は12月です。

  • DPS:1株あたり配当
  • EPS:1株あたり利益
  • CFPS:1株あたり営業キャッシュフロー
  • SPS:1株あたり売上高
  • マージン:営業キャッシュフロー・マージン

エッツィの決算(2017年12月/通期)

年月 DPS EPS CFPS SPS マージン
2015年12月 0.00 -0.59 0.36 3.00 12%
2016年12月 0.00 -0.26 0.44 3.21 14%
2017年12月 0.00 0.68 0.55 3.61 15%

配当は無配方針です。売上高、利益、営業キャッシュフローともに増加傾向にあります。営業キャッシュフロー・マージンも年々増加しています。

エッツィが2018年2月に発表した2017年12月期の決算は、事前予想を大きく上回る素晴らしいものでした。2017年の流通総額は32.5億ドル(前年比+14.5%)、売上高は4.41億ドル(前年比+20.9%)となりました。EPS(1株あたり利益)は前年の-0.26ドルから0.68ドルへと、収益が大きく改善しました。

エッチィの四半期決算

四半期 EPS 売上高 EPS
サプライズ
売上高
サプライズ
EPS
前年同期比
売上高
前年同期比
Q1 2017.03 0 0.96億ドル -100% -1.75% -100% +18%
Q2 2017.06 0.1 1.01億ドル +1100% +0.55% +267% +19%
Q3 2017.09 0.11 1.06億ドル +83.33% +1.36% +650% +21%
Q4 2017.12 0.16 1.36億ドル +77.78% +2.81% +900% +24%
Q1 2018.03 0.1 1.20億ドル +66.67% +1.17% +25%
Q2 2018.06 0.03 1.32億ドル -25% +4.14% -70% +30%

※EPSは「1株あたり利益」のことです。
※サプライズはアナリストの事前予想平均に対して、実際の結果がどれくらい上回ったか、もしくは下回ったかを表します。プラスならポジティブサプライズ、マイナスならネガティブサプライズとなります。

エッチィの株価

エッチィの株価

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