
ロナルド・リードはガソリンスタンド店員や用務員として働き、引退してからはファミレスや図書館に通い、一見するとごく平凡な人生を送っていました。しかし、彼が92歳で亡くなると、銀行の貸金庫から大量の株式が見つかり、その価値は8百万ドル(約10億円)にもなりました。
なぜ、平凡なガソリンスタンド店員がこれほどの資産を築くことができたのか、彼のサクセス・ストーリーはCNNやウォール・ストリート・ジャーナルにも取り上げられ、全米で話題になりました。
ロナルド・リードは1921年、バーモント州の貧しい農家の息子として生まれました。彼は、高校まで毎日6kmの道のりをヒッチハイクか徒歩で通い、家族で初めて高校卒業資格を得ました。
第二次世界大戦が始まるとアメリカ陸軍に入隊し、憲兵としてイタリアで従軍、1945年、24歳のときに陸軍を名誉除隊します。
故郷のバーモント州に戻ったロナルド・リードは、それから約四半世紀の間、ガソリンスタンドの店員や整備士として働きます。1979年に引退すると、翌年には百貨店のJ.C.ペニーで用務員としてパートタイムの仕事を始めます。この仕事は1997年に78歳で引退するまで、18年間続けました。
私生活でのロナルド・リードは倹約家として知られていました。
車は中古車を運転し、駐車場に停めるときはかなり離れていても駐車料金のかからない場所まで移動していたそうです。
朝食はコーヒーショップで一杯のコーヒーとピーナッツバターを塗ったエッグマフィンを食べ、コーヒーショップが閉店してからはファミレスのフレンディーズに通っていました。
服装はほつれたジャケットを安全ピンで留め、ヨレヨレのチェック柄のシャツを着ていました。彼の服装を見た他の客が、金銭的に余裕が無いだろうと考え、食事をご馳走してくれたこともあるそうです。
彼の趣味は薪割りと切手集め、コイン収集でした。2007年に86歳ではじめて図書カードを作ってからは、定期的に図書館に通って本を借りて読書を楽しみ、90歳を過ぎても自分で薪を割って、ストーブに焚べていました。
決して給与水準の高くない普通の仕事をして、倹約家で、平凡な人生を送っていたロナルド・リードですが、彼は92歳で亡くなるまでに8百万ドル(約10億円)の資産を築き上げました。
その秘密は、給料の一部で優良企業の株式を買い、配当金を再投資し、長期間株式を持ち続けるというとてもシンプルなものでした。
彼が亡くなったときには95社以上の企業の株式を保有しており、その銘柄はウェルズ・ファーゴ(銀行)、JPモルガン・チェース(銀行)、プロクター&ギャンブル(生活用品)、アメリカン・エキスプレス(クレジットカード)、ジョンソン&ジョンソン(医薬)、ゼネラル・エレクトリック(電気機器)、ダウ・ケミカル(化学メーカー)などです。
いずれも生活に身近なサービス・製品を提供している、安定した優良企業のものでした。テクノロジー企業など、自分が理解できない企業の株式は保有していませんでした。
リーマンショックの原因にもなり、倒産したリーマン・ブラザーズ(投資銀行)の株式も持っていましたが、彼は様々な企業の株式に分散投資していたため、資産全体に対する影響は小さなものでした。
また、彼は配当を出している企業の株式を好み、配当は株式の購入に再投資していました。
ロナルド・リードは決して多くない給料の一部で様々な優良企業の株式を買い、配当金を再投資して、長い間株式を持ち続けることで8百万ドル(約10億円)という大きな資産を築くことができたのです。
彼は死後、弁護士に託した遺言により、1.2百万ドル(約1億6千万円)を地元の図書館に、4.8百万ドル(約6億5千万円)を地元の病院に寄付し、2百万ドル(約2億7千万円)を2人の子供たちに遺しました。
優良企業への長期分散投資のメリット
- 安定して成長する優良企業に投資することで、株式を通じて企業の成長の恩恵を受けることができる
- 配当金を再投資することで、運用資産が増え、投資期間が長くなるほど複利効果が期待できる
- 分散投資により個別企業の業績低迷や倒産のリスクを低減できる
- 頻繁に売買しないため、売買コストを抑えることができる
優良企業への長期分散投資のデメリット
- 日々の株価の変動に一喜一憂せず、金融危機など相場の大きなニュースにも心を惑わされずに、株式を持ち続ける精神的安定性が必要
- 短期間で資産を大きく増やす手法ではない
- 必ず資産が増える保証はなく、元本割れのリスクがある